動物病院コラム

2019年6月17日 月曜日

アトピー性皮膚炎について

今回の症例は外耳炎が悪化し、アトピー性皮膚炎と診断された症例を報告させて頂きます。この症例 、実は私の愛犬でして ボストンテリアの雄2歳です。最近 耳を痒がり、 痒みで耳の裏側を引っ掻き、脱毛してしまいました。





このアレルギー性皮膚炎はワンちゃんに多い病気で 完治が非常に難しいのが特徴です。生涯に渡って付き合っていく必要があります(トホホ.....。)ご自宅のワンちゃんも同じ病気で何度も再発を繰り返し病院に通ってらっしゃるオーナー様も多いのではないでしょうか?

アトピー性皮膚炎とは遺伝的素因を背景とした慢性掻痒性皮膚疾患で、その多くが環境アレルゲン、特に室内に生息するハウスダストマイト(主に コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ)に対する IgE抗体の増加を認める病気です。

アトピー性皮膚炎を発症する犬の肌の角質バリアが遺伝的にも壊れやすいため 、環境アレルゲンであるダニ類が皮下に侵入しやすく、抗体が増加し痒みが発生してしまうのです。

対策としてはまずハウスダストを避けること。原因となるダニ類は布団やベットなどに発生しやすいため、こまめに洗濯するなど衛生的な環境を整備することが挙げられますが、完全に 除去することは不可能に近いです。

次に抗炎症薬。ステロイドやシクロスポリン、 オクラシチニブと言った薬を使って痒みを抑える方法です。特に最近はオクラシチニブ(製品名アポキル)が副作用も少なく、良い効果を与えてくれることが多いです。

他にも御自宅でできるアトピー対策があります。それは食事によるスキンケアです。残念ながら食事によってアレルギー性皮膚炎が完治することはほとんどありません。ですが、症状を軽減したり、投薬の量や回数を減らせる可能性があります。先ほど 説明した通りアトピー性皮膚炎を発症している ワンちゃんは皮膚のバリア機能が遺伝的にも低く なっていることが報告されています。

栄養学的に皮膚のバリア機能を高めてくれる成分として着目しているのが、セラミド、オメガ脂肪酸、ビタミン類などです。
セラミドは 皮膚の細胞同士をつなぎ合わせることで、皮膚のバリア機能を高めてくれます。オメガ脂肪酸やビタミン類は抗酸化作用や 抗炎症作用などがあり、これらの 栄養成分が含まれている食事を与えることで実際に皮膚炎が軽減したという報告もあります。

最初に申し上げた通り、残念ながらアトピー性皮膚炎は 完治が難しい病気です。 しかしながら、 食事や投薬によってうまくコントロールすることもできる病気です。治らないからといって放置するのではなく、 皮膚炎でお困りの方は一度御相談頂けると幸いです。 また当院では毎月、皮膚の専門医による診断も行なっていますので、アトピー性皮膚炎だけでなく皮膚病でお困りの方は御気軽に御相談ください。

獣医師の卵 関

投稿者 香椎ペットクリニック

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