動物病院コラム

2021年5月17日 月曜日

高齢猫の視覚喪失

ある日突然、眼が見えていないかもとの稟告で猫が来院されました。こ
の子は18歳とご高齢で、慢性腎不全で定期的に検査を行っていました。
いつもと違い、瞳孔は開きっぱなしで、目の前にあるものに視線を合わせることはありませんでした。

眼の詳しい検査を行いましたが、結膜の充血はなく、眼圧は正常。
しかし眼の奥がやや赤く見えていました。
その後、眼底検査、眼内超音波検査、血圧測定を行いました。
検査の結果、高血圧、眼底出血、網膜剥離と診断いたしました。

こちらが正常の眼底写真です。


そして、こちらが網膜剥離を起こした眼底写真です。


左下にダイヤの形をした部分が視神経乳頭で、その周囲は全て胞状に剥離した状態です。

この子は全身性の高血圧によって眼内の血管が障害されることにより、眼底出血や網膜剥離を起こしていました。
全身性高血圧症になる原因は多々ありますが、自分たちが良く遭遇するのは、慢性腎臓病の治療を行っている症例です。
視覚障害が起きて高いところへの昇り降りをしなくなったり、行動範囲が狭くなったりしても、「もう高齢だから」と思い込み、発見が遅くなることもあるようです。
治療は血圧を下げるお薬を服用していきます。
軽症のものでは視力が改善することが多いですが、発症から経過が長いと視力の回復が望めなくなるかも知れません。

高齢猫で眼がおかしいかなと感じたら、まずは受診を検討してください。

獣医師 高木


投稿者 香椎ペットクリニック

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