動物病院コラム

2021年10月30日 土曜日

猫のウィルス性結膜炎

猫の結膜炎は感染性と非感染性がありますが、今回はよく遭遇するウィルス感染による結膜炎の症例を紹介いたします。

症例は12歳のシニア猫さんで4年前にFVR(猫ウィルス性鼻気管炎)での治療歴がありました。
くしゃみや鼻水などの鼻炎症状が主で、結膜炎症状はありませんでした。
当初はインターフェロンという抗ウィルス薬の点眼薬やL-リジンという抗ウィルス内服薬で治療を行いました。
しかし完治は得られず、半年後に左眼の結膜炎で来院されました。
そこでも同様の治療を行いましたが、症状が少し残ってしまった状態で経過観察となりました

それからは流涙は残っているが、充血などはなく安定した状態だったのですが、3年後に右眼の重度の結膜炎で来院されました。

右眼の上下の瞼は赤く腫れて、瞬膜も炎症により露出していました。
おかげで眼の全貌が確認しづらかったのですが、本来透明である角膜部分も白く濁っていました。
過去と同様の治療から開始したのですが、今回は反応が乏しく、まったく改善が見られませんでした。
目ヤニも多く見られましたが、培養検査では細菌は見られませんでした。
状況的にもウィルス性の可能性が高いので、それまでに未使用の抗ウィルス薬を選択していきました。
中には比較的高額なお薬もありましたが、オーナーは意欲的にそれらも希望されました。
点眼薬も1日6回以上、飲み薬も1日2回と集中的に治療を行いました。
オーナーの頑張りのおかげで、3ヶ月近く要しましたが、やっとエリザベスカラーを外して様子を見れるレベルまで回復しました。
上の写真が治療開始時、下の写真が治療終了時になります。
よくぞここまで回復してくれた!という気持ちです。





現在は症状の再燃がないか、様子をみている状況です。このまま安定してくれることを願っています。

今回の症例の様に、慢性化したウィルス性の感染症が突然悪化するようなことがあるのかもしれません。常々、動物たちの様子は観察をしていきましょう。

獣医師;高木

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2021年10月20日 水曜日

口腔内腫瘍

今回は口腔内に発生した腫瘍について、お話ししたいと思います。

患者は高齢のダックスで、主訴は昨日からご飯を食べないとのこと。
通常、問診をしていきながら鼻先から尻尾まである程度視診、触診を行っていくのですが、最初のお口の視診で、お口の奥に大きな腫瘤が見えました。
その上で問診をすすめると、いびきのような呼吸音と、数ヶ月前から舌をペロペロする仕草があったことが判明しました。

よく観察すると、その腫瘤は軟口蓋(お口の奥の上側の柔らかいところ)から発生していました。
これであれば、腫瘤の増大と、臨床経過(下をペロペロする→いびき→食欲廃絶)の内容が合致します。

この腫瘤は除去しない限り自ら食べることは難しそうです。
高齢ではあったものの、オーナー様と協議の末、手術する事になりました。

画像は仰向けにしてお口を開いた状態です。

画像の中央に、舌に接する楕円形の腫瘤が見られます。

この後、この腫瘤を切除し、縫合を行いました。


切除した主流は病理検査に提出し、「悪性メラノーマ」との診断結果でした。

口唇やお口の中の出来物は悪性のことも多く、場合によっては歯や顎の骨を一部除去して行う場合もあります。
軟口蓋は比較的柔らかい組織で縫合は容易ですが、範囲が狭いので大きく切り取ることができません。
悪性の場合は正常組織を含め大きく切除しないと再発することが多いのですが、
今回もギリギリでの切除になり、再発の可能性は極めて高いと予測されます。

今後は抗がん剤治療を進めていくことになりますが、
高齢でもあるので、QOL(生活の質)を落とすような厳しい治療内容ではなく、
しかしある程度メラノーマも抑えられるような治療内容を行っていければと思います。

お口の中の腫瘤は、見えにくい分、やはり発見が遅れがちです。
腫瘤が小さければ小さいほど、正常組織を含め大きく取り切ることが可能になります。
早期発見が大事なのですが、それには、初期の症状を見落とさないことが重要です。
今回の例で言えば、数ヶ月前から舌をペロペロしていた、これが初期症状になります。

小さな症状でも、何かいつもと違うと感じたら、早めに病院に相談して頂ければと存じます。

獣医師;河野

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2021年10月 6日 水曜日

犬のリンパ腫④

今回もリンパ腫の紹介です。

今回の症例は10歳ほどのミニチュアダックスです。

食欲不振、嘔吐、下痢を主訴に来院されました。


検査を実施したところレントゲン検査において





赤矢印のいちに糞塊のような腫瘤が認められます。

CT検査をしてみると、、



通常の消化管構造と全く異なる病変部が認められました。

病変の周囲には腹膜炎を示唆する所見も確認できます。

また病変の周囲のリンパ節が腫大していたため細胞診検査を実施したところ



大型のリンパ球が多数認められ、悪性所見である核分裂像(赤く囲った箇所)も確認されました。

以前お話ししたようにリンパ腫の治療は一般的には化学療法(抗がん剤)ですが、この症例では上記の病変が消化管の通過障害を引き起こしていたため、外科的に病変を切除いたしました。


病理結果は消化器型リンパ腫(悪性)でした。


消化器型リンパ腫は、以前紹介した縦郭型リンパ腫や、一般的に多く認められる多中心型リンパ腫と比較して予後が悪いといわれています。

この症例は病変がなくなり食欲など一般状態は回復してくれました。

手術後の抗がん剤治療については副作用などもあるため、飼い主様と相談していこうかと思います。

獣医師;永松

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2021年10月 6日 水曜日

マイクロチップの装着

私事ですが、つい先日、母が新しい家族を実家にお迎えしたようです。それは下の写真のまだ2カ月齢になったばかり、トイプードルのティラちゃんです。









ここだけの話ですが、ワンちゃんを迎えるにあたっての準備やお世話の仕方など、色々聞かれて大変でした。

その中で、「マイクロチップはつけた方がいいの?」という質問に正直上手く答えられなかったので、今回は簡単に調べてみました。





すると、現段階では特定動物(危険な動物)や特定外来生物を飼う場合にのみマイクロチップの装着が義務づけられているみたいです。



しかし、動物愛護法の改定で来年(2022年)6月以降、犬猫においても販売業者(ペットショップさんやブリーダーさん等)でのマイクロチップ装着や情報登録の義務化されるところのようです。

新しくワンちゃんを飼った飼い主さんに課せられる義務は登録情報の変更のみとなります。



ここで母からの質問、「マイクロチップはつけた方がいいの?」ですが、飼い主さん目線で付けた方がいい理由は以下の2つかなと思います。

1.脱走や災害時の迷子犬と飼い主さんとの再会率を上げるため

2.海外へ入国の際にマイクロチップ装着が必要な国もあるため



マイクロチップは約2㎜×12㎜と小さなものですが金属です。表面は生体適合ガラスで覆われているので、金属アレルギーの心配はいらないのかなと思います。MRI画像検査での金属アーティファクトは多少存在しそうですが、普段の診察で『マイクロチップをつけているからMRIが撮れない!』なんてことはありません。



以上より、大きなデメリットはあまりないように感じます。しかし、数万件に1~2頭の確率で、装着後にアレルギー反応が認められただとか、マイクロチップ装着部位に感染や腫瘍形成が認められたという海外の報告もあるみたいです...。



獣医師の立場としては、これらの情報を提示した上で、話し合って決めていきたいと思います。





最後に、ティラちゃんには母とともに健康で元気に長生きしてもらいたいなと思います。

また、緊急事態宣言も解除されたので、いつか鹿児島まで会いに行きたいなと思います。





獣医師:田上

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2021年10月 3日 日曜日

犬のリンパ腫③

犬のリンパ腫③

少し前にリンパ腫についてお話いたしましたが今回もリンパ腫について症例を紹介します。

今回の症例は若齢のペキニーズでしたが、口唇の一部の色素が薄くなってきたため受診されました。



一般的に体表にできものが形成された場合は細胞診検査(FNA)という、針を刺して細胞を採取して顕微鏡で観察する検査を実施して、どういったものであるかを推測することが多いですが、

今回の場合、病変の形成部位が口であったため針を刺すことが困難でした。

このため、経過を見ていたのですがゆっりりと膨らんできたため、オーナーと相談の結果、全身麻酔での手術に踏み切りました。

切除したものを病理検査に依頼したところ、皮膚型リンパ腫(悪性)という診断でした。

幸い、今回の病変は単一病変であったので、切除後は化学療法を実施せずに経過を観察しております。

半年ほど経過しておりますが、明らかなリンパ腫の再発、転移を疑う病変は認められておりません。

できものを切除して病理検査を実施すると意外な結果が判明する場合もあるため、細胞診検査が難しい場合は思い切って切除していくことも大事なんだと感じました。

獣医師;永松

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