動物病院コラム
2021年7月24日 土曜日
融解性角膜潰瘍
以前にも角膜潰瘍のお話をいたしましたが、今回はその一病態である融解性角膜潰瘍をお話しします。
角膜潰瘍とは角膜実質のコラーゲンが過剰分解されている状態を指します。
潰瘍が発生する原因には①細菌や真菌、ウィルス感染などが原因の感染性と、
②自己免疫反応が引き金になる非感染性に分けられます。
またコラーゲンを分解する酵素であるコラゲナーゼには細菌性のものと細胞由来のものがあり、
細菌感染の場合は急速に角膜の融解が起こります。
今回、角膜損傷から急速に悪化し、融解性角膜潰瘍に至った症例を紹介します。
13歳齢のチワワで、今まで何度も角膜損傷を患ったことがある症例です。
最初は角膜に少し傷が付いている程度の軽傷ですが、
3日後の再診時には角膜の一部が白く腫れあがり、融解性の角膜損傷に進行していました。
写真で見ると角膜の5時方向が半円状に白濁になっています。
初診時から抗生物質の点眼治療は行っていましたが、
抗生物質が効いていない可能性があったので、細菌培養及び感受性検査を行いました。
その4日後(初診から7日後)には白濁部は拡大かつ剥離していて、
感染が眼内に波及しブドウ膜炎も併発していました。
このままでは角膜穿孔にまで波及する恐れがありましたが、
感受性結果から効果が高い種類の点眼薬に変更して、内服薬、血清点眼を追加しました。
オーナーさんの献身的な看護により、現在は徐々に快方に向かっている状況です。
通常、軽度の角膜損傷であれば痛そうに眼を閉じる症状は3~4日もすれば治まってくることが多いですが、
痛みが続くときは角膜の状態が悪くなっているか、違う原因が隠れていることもあります。
眼は緊急疾患になることもありますので、あまり様子を見すぎないようにしましょう。
獣医師 高木
角膜潰瘍とは角膜実質のコラーゲンが過剰分解されている状態を指します。
潰瘍が発生する原因には①細菌や真菌、ウィルス感染などが原因の感染性と、
②自己免疫反応が引き金になる非感染性に分けられます。
またコラーゲンを分解する酵素であるコラゲナーゼには細菌性のものと細胞由来のものがあり、
細菌感染の場合は急速に角膜の融解が起こります。
今回、角膜損傷から急速に悪化し、融解性角膜潰瘍に至った症例を紹介します。
13歳齢のチワワで、今まで何度も角膜損傷を患ったことがある症例です。
最初は角膜に少し傷が付いている程度の軽傷ですが、
3日後の再診時には角膜の一部が白く腫れあがり、融解性の角膜損傷に進行していました。
写真で見ると角膜の5時方向が半円状に白濁になっています。
初診時から抗生物質の点眼治療は行っていましたが、
抗生物質が効いていない可能性があったので、細菌培養及び感受性検査を行いました。
その4日後(初診から7日後)には白濁部は拡大かつ剥離していて、
感染が眼内に波及しブドウ膜炎も併発していました。
このままでは角膜穿孔にまで波及する恐れがありましたが、
感受性結果から効果が高い種類の点眼薬に変更して、内服薬、血清点眼を追加しました。
オーナーさんの献身的な看護により、現在は徐々に快方に向かっている状況です。
通常、軽度の角膜損傷であれば痛そうに眼を閉じる症状は3~4日もすれば治まってくることが多いですが、
痛みが続くときは角膜の状態が悪くなっているか、違う原因が隠れていることもあります。
眼は緊急疾患になることもありますので、あまり様子を見すぎないようにしましょう。
獣医師 高木
投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL
2021年7月 4日 日曜日
ワクチン接種後の副反応について
7月1日の時点で、日本の新型コロナウイルス感染症の1回目のワクチン接種率が24%、2回目の接種率が12%を上回ったようです。皆さんはこのワクチン接種についてどのようにお考えでしょうか。ちなみにわたしは、接種については前向きに検討しているのですが、副反応のニュースを見るたびに少し怖いなと思っているところです。
そういうわけで今回は、前回のワクチンの話題に引き続き、ワクチンの副反応について正しい知識を持っていただくために、ワンちゃんのワクチン接種後における副反応の種類や発生頻度、発生時間について調べていきたいと思います。
そもそもワクチンとは何でしょう?
ワクチンとは、感染症の原因となる病原体をごく少量、もしくは病原性を不活化したものを体内に接種し、病気に対する免疫(抵抗力)をつけることをいいます。免疫ができることで、その感染症に再びかかりにくくなったり、かかっても症状が軽くなったりするようになります。
つまり、ワクチン接種とは生体にとって異物となる病原体を体内に取り入れるため、異物に対して体内の免疫が過剰に働くことで副反応が起こってしまうのです。
ある文献によると、日本における犬のワクチン接種後アレルギー反応の発生率は、循環器・呼吸器症状(虚脱、頻脈、低血圧、呼吸困難など:アナフィラキシー)が0.072%、皮膚症状(顔面の腫脹や浮腫、蕁麻疹など)が0.426%、消化器症状(嘔吐、下痢)が0.279%であったことが報告されています。そして、日本においては小型犬種、とくにミニチュアダックスフンドでワクチン接種後アレルギー反応の発生が多いようです。
(Vet Immunol Immunopathol.2012 Jan:447-452.)
また下の図は、症状別に、ワクチン接種後から臨床症状が発現するまでの時間毎の症例数を表しています。
図 ワクチン接種後アレルギー反応の発症時期(参考;犬の治療ガイド2020 p1059)
上の図より、皮膚症状はワクチン接種後数分~24時間、あるいはそれ以上経過してからでも発生しますが、より重篤な副反応(循環・呼吸器症状)の場合は、ワクチン接種後数分~60分以内に発生し、とくに5分以内の発生が多いことがわかります。
上記のような副反応が出た症例については、酸素吸入や昇圧剤、免疫抑制薬の投与など、迅速に処置を行う必要があります。副反応が出た際にすぐに病院に行けるよう、1日付き添っていられる日の午前中に接種することをお勧めいたします。そして、ワクチン接種後は安静に、激しい運動やシャンプーなどは1日お休みしてしっかり様子を見てあげましょう。特に接種してから1時間以内にぐったりしていたり、呼吸がいつもと違ったり、お顔が腫れたりした場合は、すぐにお近くの動物病院さんへご連絡ください。
最後に、ワクチン接種は感染症から守ることのできる非常に有効な手段です。しかし副反応というリスクを伴うものであることを常に意識しておきましょう。そして、ご家族である大事なワンちゃん、ネコちゃんの命、一緒に守っていきましょう (^^)♪
獣医師 田上
そういうわけで今回は、前回のワクチンの話題に引き続き、ワクチンの副反応について正しい知識を持っていただくために、ワンちゃんのワクチン接種後における副反応の種類や発生頻度、発生時間について調べていきたいと思います。
そもそもワクチンとは何でしょう?
ワクチンとは、感染症の原因となる病原体をごく少量、もしくは病原性を不活化したものを体内に接種し、病気に対する免疫(抵抗力)をつけることをいいます。免疫ができることで、その感染症に再びかかりにくくなったり、かかっても症状が軽くなったりするようになります。
つまり、ワクチン接種とは生体にとって異物となる病原体を体内に取り入れるため、異物に対して体内の免疫が過剰に働くことで副反応が起こってしまうのです。
ある文献によると、日本における犬のワクチン接種後アレルギー反応の発生率は、循環器・呼吸器症状(虚脱、頻脈、低血圧、呼吸困難など:アナフィラキシー)が0.072%、皮膚症状(顔面の腫脹や浮腫、蕁麻疹など)が0.426%、消化器症状(嘔吐、下痢)が0.279%であったことが報告されています。そして、日本においては小型犬種、とくにミニチュアダックスフンドでワクチン接種後アレルギー反応の発生が多いようです。
(Vet Immunol Immunopathol.2012 Jan:447-452.)
また下の図は、症状別に、ワクチン接種後から臨床症状が発現するまでの時間毎の症例数を表しています。
図 ワクチン接種後アレルギー反応の発症時期(参考;犬の治療ガイド2020 p1059)
上の図より、皮膚症状はワクチン接種後数分~24時間、あるいはそれ以上経過してからでも発生しますが、より重篤な副反応(循環・呼吸器症状)の場合は、ワクチン接種後数分~60分以内に発生し、とくに5分以内の発生が多いことがわかります。
上記のような副反応が出た症例については、酸素吸入や昇圧剤、免疫抑制薬の投与など、迅速に処置を行う必要があります。副反応が出た際にすぐに病院に行けるよう、1日付き添っていられる日の午前中に接種することをお勧めいたします。そして、ワクチン接種後は安静に、激しい運動やシャンプーなどは1日お休みしてしっかり様子を見てあげましょう。特に接種してから1時間以内にぐったりしていたり、呼吸がいつもと違ったり、お顔が腫れたりした場合は、すぐにお近くの動物病院さんへご連絡ください。
最後に、ワクチン接種は感染症から守ることのできる非常に有効な手段です。しかし副反応というリスクを伴うものであることを常に意識しておきましょう。そして、ご家族である大事なワンちゃん、ネコちゃんの命、一緒に守っていきましょう (^^)♪
獣医師 田上
投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL
2021年6月29日 火曜日
狂犬病ワクチン
もうここ1~2年、自粛生活も続く中で皆さんはどのようにお過ごしでしょうか。私は専らインドア派なので、おうち時間は無理なく過ごせていますが、居酒屋やカラオケが恋しかったりもします。
さて、福岡市でも65歳以下のワクチン接種の予約がいよいよ開始されますね。ワクチンの普及率が上がれば、日常でマスクを外せる日を迎えることができるのでしょうか。
そんな期待の膨らむワクチンですが、ワンちゃん・ネコちゃんにも色んなワクチンがあるのをご存知ですか?今回はその中でも日本の法律で、ワクチン接種が義務化されている、ワンちゃんの病気「狂犬病」についてお話ししたいと思います。
日本では1950年狂犬病予防法が制定され、ワクチン接種や野犬の捕獲が行われた結果、1957年での発生を最後に撲滅に成功しています。ゆえに、わが国では64年間は狂犬病の発生がないのです。
ではなぜ今でもワクチン接種をしなければならないのか、について考えていきたいと思います。
狂犬病はウイルスによって全ての哺乳類に感染するといわれています。なのでワンちゃんだけでなく、ネコちゃんにも牛にもコウモリにも、もちろん人にも感染します。
下の図は、厚生労働省が2016年に作成した世界の狂犬病の発生状況を表しています。なんと、清浄国は島国しかありません。狂犬病ウイルスはあらゆる哺乳類の間で保菌されてしまうので、撲滅するのが難しい理由の1つと言えます。
このように、海外ではまだまだ身近で恐ろしい病気です。発症した人のほとんどは犬の咬傷によって感染しており、その致死率はなんと100%です。ただし、人から人への感染はありません。ゆえにワンちゃんの体内の狂犬病ウイルスをコントロールできれば、この病気には怯えることなく生活ができるのです。ここまでウイルスが世界全体に蔓延している中で日本がワクチン接種をやめてしまうと、万が一日本に狂犬病ウイルスが入り込んでしまった際は一瞬で感染が広がりそうです。
ワンちゃん・ネコちゃん達と私たちが今後もともに健康で一緒に暮らしていくためには、ワクチン接種が欠かせないものとなりそうですね。そうであっても、ワクチンに対して不安に思うことやわからないことはあると思いますので、その際は当院にご気軽にご相談ください。
獣医師 田上
さて、福岡市でも65歳以下のワクチン接種の予約がいよいよ開始されますね。ワクチンの普及率が上がれば、日常でマスクを外せる日を迎えることができるのでしょうか。
そんな期待の膨らむワクチンですが、ワンちゃん・ネコちゃんにも色んなワクチンがあるのをご存知ですか?今回はその中でも日本の法律で、ワクチン接種が義務化されている、ワンちゃんの病気「狂犬病」についてお話ししたいと思います。
日本では1950年狂犬病予防法が制定され、ワクチン接種や野犬の捕獲が行われた結果、1957年での発生を最後に撲滅に成功しています。ゆえに、わが国では64年間は狂犬病の発生がないのです。
ではなぜ今でもワクチン接種をしなければならないのか、について考えていきたいと思います。
狂犬病はウイルスによって全ての哺乳類に感染するといわれています。なのでワンちゃんだけでなく、ネコちゃんにも牛にもコウモリにも、もちろん人にも感染します。
下の図は、厚生労働省が2016年に作成した世界の狂犬病の発生状況を表しています。なんと、清浄国は島国しかありません。狂犬病ウイルスはあらゆる哺乳類の間で保菌されてしまうので、撲滅するのが難しい理由の1つと言えます。
このように、海外ではまだまだ身近で恐ろしい病気です。発症した人のほとんどは犬の咬傷によって感染しており、その致死率はなんと100%です。ただし、人から人への感染はありません。ゆえにワンちゃんの体内の狂犬病ウイルスをコントロールできれば、この病気には怯えることなく生活ができるのです。ここまでウイルスが世界全体に蔓延している中で日本がワクチン接種をやめてしまうと、万が一日本に狂犬病ウイルスが入り込んでしまった際は一瞬で感染が広がりそうです。
ワンちゃん・ネコちゃん達と私たちが今後もともに健康で一緒に暮らしていくためには、ワクチン接種が欠かせないものとなりそうですね。そうであっても、ワクチンに対して不安に思うことやわからないことはあると思いますので、その際は当院にご気軽にご相談ください。
獣医師 田上
投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL
2021年6月16日 水曜日
犬の甲状腺腫瘍
今回は犬の甲状腺腫瘍の症例を紹介します。
本症例は定期的にトリミングで来院されており、体調は問題なかったのですが体重がどんどん落ちていた為、触診してみると喉のあたりに5㎝大の腫瘤が認められました。
精査のためにCTや細胞診検査などを実施いたしました。
喉の部分にしこりが認められます。
このしこりに針を刺して細胞を採取して顕微鏡で確認しました。
このような細胞が採取され、血液検査にて甲状腺ホルモンが異常高値を示していた為、甲状腺癌と診断いたしました。
(正確には通常の甲状腺より頭側に位置する、異所性の甲状腺癌と診断いたしました)
甲状腺癌の治療は主に外科的な切除と放射線治療となります。
今回の症例では、腫瘍により喉を形成する骨の一部が溶解しており、手術をすることで嚥下機能などに障害が出てしまう可能性もあり実施が困難でした。
また放射線治療についても、費用や本人の負担を考えて実施しないことになりました。
効果があるか微妙でしたが、抗がん剤の飲み薬を処方して経過を見ております。
体重減少傾向は依然認められておりますが、元気にご飯も食べてくれております。
体調に大きな異常がない場合でも、触診によって大きな病気が見つかることもあるということを改めて実感いたしました。
獣医師;永松
本症例は定期的にトリミングで来院されており、体調は問題なかったのですが体重がどんどん落ちていた為、触診してみると喉のあたりに5㎝大の腫瘤が認められました。
精査のためにCTや細胞診検査などを実施いたしました。
喉の部分にしこりが認められます。
このしこりに針を刺して細胞を採取して顕微鏡で確認しました。
このような細胞が採取され、血液検査にて甲状腺ホルモンが異常高値を示していた為、甲状腺癌と診断いたしました。
(正確には通常の甲状腺より頭側に位置する、異所性の甲状腺癌と診断いたしました)
甲状腺癌の治療は主に外科的な切除と放射線治療となります。
今回の症例では、腫瘍により喉を形成する骨の一部が溶解しており、手術をすることで嚥下機能などに障害が出てしまう可能性もあり実施が困難でした。
また放射線治療についても、費用や本人の負担を考えて実施しないことになりました。
効果があるか微妙でしたが、抗がん剤の飲み薬を処方して経過を見ております。
体重減少傾向は依然認められておりますが、元気にご飯も食べてくれております。
体調に大きな異常がない場合でも、触診によって大きな病気が見つかることもあるということを改めて実感いたしました。
獣医師;永松
投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL
2021年5月30日 日曜日
CT検査vol.36
今回はまた、誤食してしまった症例のCT画像を紹介していきます。
何を食べてしまったかというと、なんと釣り針です。
どうやら海岸の散歩中に食べてしまったようです。
画像をみていきましょう。
どこに釣り針があるかわかりますか?
釣り針は胃の方まではいかず、途中の食道に引っかかっておりました。
気管や血管などの損傷はなかったのが、不幸中の幸いでした。
最初は内視鏡にて摘出を試みましたが、針先が食道を貫通していたため、引っ張り出すことができず、開胸手術を行って摘出しました。
食べてしまったものは小さいですが、鋭利なものだと今回のように開胸手術になったり、回腹手術になってしまいます。
犬や猫は、ふとした時に色々なものを誤食してしまうことがあるので、危険なものを食べてしまわないように気をつけましょう。
獣医師 木場
何を食べてしまったかというと、なんと釣り針です。
どうやら海岸の散歩中に食べてしまったようです。
画像をみていきましょう。
どこに釣り針があるかわかりますか?
釣り針は胃の方まではいかず、途中の食道に引っかかっておりました。
気管や血管などの損傷はなかったのが、不幸中の幸いでした。
最初は内視鏡にて摘出を試みましたが、針先が食道を貫通していたため、引っ張り出すことができず、開胸手術を行って摘出しました。
食べてしまったものは小さいですが、鋭利なものだと今回のように開胸手術になったり、回腹手術になってしまいます。
犬や猫は、ふとした時に色々なものを誤食してしまうことがあるので、危険なものを食べてしまわないように気をつけましょう。
獣医師 木場
投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL