動物病院コラム

2016年8月31日 水曜日

猫の糖尿病

今回は人でも良く耳にする病気で、猫の糖尿病についてお話しさせていただきます。

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンと呼ばれる生体の血糖値を下げる作用をもつホルモンが分泌されにくくなって、血糖値が上昇してしまう病気です。
これは遺伝的なものや肥満、環境的なものも原因となって発症します。
また、発症しやすい猫として、7〜10歳の猫や肥満や去勢したオス猫に多いとされています。

高血糖となった猫にみられる症状としては、元気がなくなったり、多飲・多尿、体重減少から嘔吐や脱水もみられるようになります。
また、糖尿病が進行して高血糖が続くと、代謝異常によって昏睡状態に陥り、重篤なものは死に至ることもあります。
他にも糖尿病は全身の主要臓器において合併症を引き起こすことが多く、猫では膀胱炎や腎不全などが良く見られます。

糖尿病の治療としては、血糖値を下げるインスリンが不足しているので、このインスリンを投与しなければなりません。
ただこの投与するインスリンの量が問題で、量が少なすぎると血糖値を下げることができませんし、逆に多すぎると今度は血糖値を下げ過ぎてしまい低血糖となって痙攣などが起こってしまいます。
なので、インスリンの量を決定するには、病院に数日入院して血糖値を管理する必要があります。
入院で血糖値が安定するインスリンの投与量が決定したら、今度はご自宅でインスリンを投与してもらわなければなりません。
このインスリンの投与は人と同じで皮下に注射を打ちますが、毎日打たないといけないので飼い主さんの努力も必要です。
また、猫の糖尿病の管理において、食事も非常に重要です。
この食事管理の目的は、食後の血糖値とインスリンの分泌の変動を緩やかにすること、そして肥満の猫の場合は体格を理想体重に近づけることです。
食事内容としては猫では、低炭水化物・高タンパク食が推奨されており、病院などでは糖尿病管理のためのこのようなフードが販売されています。

糖尿病の治療には飼い主さんのご自宅での管理が必要です。ご自宅での血糖値の管理は非常に大変だと思いますが、飼われている猫ちゃんのためにも一緒に病気と闘っていきましょう。



獣医師 木場

投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL

2016年8月12日 金曜日

毛包虫症(ニキビダニ症)

ニキビダニ症はニキビダニにより生じる皮膚疾患であり、犬に多く猫ではまれな疾患です。
犬のニキビダニ症の原因はDemodex canisという犬の毛包を好む種類の虫で、これが犬の毛包内に寄生します。
犬では生後72時間以内に母犬から子犬に伝播する常在寄生虫であり、ニキビダニ症の発症には何らかの免疫失調が関与すると考えられています。


症状は多彩な皮膚症状が見られます。
脱毛や色素沈着、発赤、鱗屑(ふけ)、ときに細菌感染を伴う毛包炎があります。
好発部位は頭部(目の周り)、頸部、四肢(肘や踵)などがあります。



このワンちゃんの脱毛しているところは全てニキビダニが見つかりました。

また発生している場所の数により局所性と全身性、発症年齢により若年性と成犬発症性とに分類されます。
局所性は1歳齢以下の幼齢犬で発生することが多く、適切な治療で改善することが多いです。
全身性の場合は若年性と成犬性があり、成犬性は免疫異常を起こす基礎疾患も併発してることが多く、
そちらに対する検査、治療も同時に行います。
全身性では治療を成功させることが極めて難しい症例もあります。

診断は臨床症状(発症している場所や痒みの程度)と皮膚の検査を行います。
皮膚の検査は『皮膚掻爬検査』『毛検査』『皮膚生検』などがありますが、『皮膚掻爬検査』が最も有用な検査です。
これは疑わしい部位の皮膚を絞りつつ引っ掻く検査になります。
少し出血しますが、この寄生虫のいる場所が皮膚の深い所なので、そこまで掻爬しないと検出できないことがあります。



これが検出されたニキビダニです。

ニキビダニ症の治療は、ニキビダニの駆虫、薬用シャンプーによる外用療法や細菌感染に対する抗生物質などと状況により治療法を選択します。
駆虫薬も日々進歩して、注射や液剤を内服する方法や、背中にスポットする方法や長期間効果が期待できる内服薬などもあり、より安全な治療が選択できるようになりました。

皮膚のトラブルは悪化する前に病院での診察をお勧めします。



獣医師 高木

投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL

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