動物病院コラム

2019年6月25日 火曜日

胃拡張捻転症候群について

今回の症例は犬の胃拡張捻転症候群についてです。食後、急に嘔吐、腹部が張り苦しそうとのことで急患として運ばれてきました。
胃のレントゲンを撮影してみるとこのようになっていました。


これは胃が捻転し拡張した画像を示しています。胃内部にガスが溜まり膨らんでいます。胃捻転拡張症は胃の拡張と胃腸間膜における胃のねじれに起因する、主に犬の急性疾患です。原因は解明されていないのでやっかいですが、危険因子として1日1回の多量の食事、早食い、食後の激しい運動などがあげられます。

好発犬種として大型犬などの胸の深い大型犬や超大型犬に多いとされていますが、小型犬でも発症しうる病気で、致死率が高いです。ちなみに今回の症例はウェルシュ・コーギーでした。

胃が拡張するだけの場合より捻転を伴ったものが多くより緊急性が高いです。拡張・捻転した胃によって肝臓の門脈や後大静脈が圧迫されるため、結果として各種臓器への血流が不足し、低酸素症が起こります。特に心臓への血流不足は要注意とされていて、不整脈が発生し、死に至ります。

この症例は緊急にオペが行われましたが、その際に大事なのが低酸素によって壊死した組織の除去です。壊死していた部位が残るとその後の予後は悪いとされています。

この疾患は術後の管理がとても大切で、不整脈、再灌流障害、感染、播種性血管内凝固(DIC)が起こる可能性があるため気が抜けません。

術後、レントゲンを撮影してみると正常な位置に胃が整復されていました。



このワンちゃんは発症後の処置が迅速だったため、術後元気な姿を見せてくれました。もし、御自宅の愛犬が食後すぐに、嘔吐、腹囲膨満、呼吸困難などの症状が現れたら、迷わずかかりつけの動物病院に連絡して、検査をして下さい。すぐに対応することで生存できる可能性が高まります。

獣医師の卵 関

投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL

2019年6月17日 月曜日

アトピー性皮膚炎について

今回の症例は外耳炎が悪化し、アトピー性皮膚炎と診断された症例を報告させて頂きます。この症例 、実は私の愛犬でして ボストンテリアの雄2歳です。最近 耳を痒がり、 痒みで耳の裏側を引っ掻き、脱毛してしまいました。





このアレルギー性皮膚炎はワンちゃんに多い病気で 完治が非常に難しいのが特徴です。生涯に渡って付き合っていく必要があります(トホホ.....。)ご自宅のワンちゃんも同じ病気で何度も再発を繰り返し病院に通ってらっしゃるオーナー様も多いのではないでしょうか?

アトピー性皮膚炎とは遺伝的素因を背景とした慢性掻痒性皮膚疾患で、その多くが環境アレルゲン、特に室内に生息するハウスダストマイト(主に コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ)に対する IgE抗体の増加を認める病気です。

アトピー性皮膚炎を発症する犬の肌の角質バリアが遺伝的にも壊れやすいため 、環境アレルゲンであるダニ類が皮下に侵入しやすく、抗体が増加し痒みが発生してしまうのです。

対策としてはまずハウスダストを避けること。原因となるダニ類は布団やベットなどに発生しやすいため、こまめに洗濯するなど衛生的な環境を整備することが挙げられますが、完全に 除去することは不可能に近いです。

次に抗炎症薬。ステロイドやシクロスポリン、 オクラシチニブと言った薬を使って痒みを抑える方法です。特に最近はオクラシチニブ(製品名アポキル)が副作用も少なく、良い効果を与えてくれることが多いです。

他にも御自宅でできるアトピー対策があります。それは食事によるスキンケアです。残念ながら食事によってアレルギー性皮膚炎が完治することはほとんどありません。ですが、症状を軽減したり、投薬の量や回数を減らせる可能性があります。先ほど 説明した通りアトピー性皮膚炎を発症している ワンちゃんは皮膚のバリア機能が遺伝的にも低く なっていることが報告されています。

栄養学的に皮膚のバリア機能を高めてくれる成分として着目しているのが、セラミド、オメガ脂肪酸、ビタミン類などです。
セラミドは 皮膚の細胞同士をつなぎ合わせることで、皮膚のバリア機能を高めてくれます。オメガ脂肪酸やビタミン類は抗酸化作用や 抗炎症作用などがあり、これらの 栄養成分が含まれている食事を与えることで実際に皮膚炎が軽減したという報告もあります。

最初に申し上げた通り、残念ながらアトピー性皮膚炎は 完治が難しい病気です。 しかしながら、 食事や投薬によってうまくコントロールすることもできる病気です。治らないからといって放置するのではなく、 皮膚炎でお困りの方は一度御相談頂けると幸いです。 また当院では毎月、皮膚の専門医による診断も行なっていますので、アトピー性皮膚炎だけでなく皮膚病でお困りの方は御気軽に御相談ください。

獣医師の卵 関

投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL

2019年6月 4日 火曜日

CT検査vol.20

今回は、鼻水が止まらない猫の症例を紹介いたします。

まず、鼻水の原因としては色々あります。
一般的に猫で鼻水の原因として良く目にするのが、猫のヘルペスウイルスによる猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)、いわゆる猫風邪によるものです。

また、ウイルスの他にも細菌や真菌(カビ)の感染だったり、鼻腔内の腫瘍、歯根膿瘍からの鼻への感染が原因だったりすることもあります。

今回の症例の猫も鼻水の経過も数ヶ月前からと経過も長く、ウイルスや細菌の治療はしているものの、全く症状はおさまらずCT検査を希望されて来院されました。








これらの画像は猫の頭の部分をそれぞれ、正面からの断面と側面からの断面画像です。
正面からの断面画像をみると、明らかに顔の右半分と左半分に違いがあるのがわかります。
向かって右半分の黒く抜けてない方が、異常がみられる部分です。



ちなみに3枚目の画像は、側面からの断面画像で2枚目の画像の反対側の断面です。
こちら側は正常な画像です。

これらの画像で、明らかに右側の鼻腔内全体的は蓄膿しているようにみえます。
そしてこれらをよく見てみると、





4、5枚目の画像で赤い丸で囲ったところに白く写し出されている部分があります。

正確にこの部分が何なのかは、この部分の組織を採材して病理検査をしてみないと診断できません。

残念ながら、この症例の猫はそこまで検査に至っていません。
ただ一見、腫瘍のようにも見えますが、この猫が1歳半で若齢の猫だということを考えると腫瘍の可能性は低く、もしかしたら異物の可能性も考えられます。

異物であれば、一体どんなものが鼻の中に入り込んだのか気になるところです。

獣医師 木場

投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL

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