動物病院コラム

2017年3月21日 火曜日

慢性下痢

下痢は些細なことですぐに起こります。食事の変更だったり緊張やストレスが原因だったり、また伝染病によるものなど多岐にわたります。


 食欲やお散歩に行く元気があれば、下痢が見られても軽い治療(止瀉薬、整腸剤、皮下輸液など)や短期間の絶食で改善することがほとんどです。しかしこれらの治療に反応が乏しく、下痢の症状が3週間以上続く=慢性下痢の場合には重大な病気が隠れていることもあります。

 元気や食欲がない、1日に何回も嘔吐する、いつもの便と色や硬さが違う状態が続くなど、おかしいなと感じたらまずは診察をお勧めします。



 慢性下痢の症例では、診断のために様々な検査(糞便検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、内視鏡検査、病理組織学検査など)を行っていきます。しかし、慢性下痢は原因となる疾患が多いので、たくさんの検査を行っても診断が難しいのが現状です。


 

 問診にて食事内容や生活環境に変化はないか、いつから発症しているか、初発か再発かなどを事細かに確認していきます。聴診や触診の身体検査で異常がないかを診察していきます。そして必要に応じて上記の検査を行ない、寄生虫やウィルスまたは細菌の感染症、リンパ腫などの消化管腫瘍などを除外していきます。


 慢性下痢に対する診断のためには、検査だけでなく試験的治療を行うこともあります。まず食事反応性腸症(食物アレルギーや食物不耐性など)を疑って低アレルギー食の給与を行います。それで改善がなければ次に抗菌薬反応性腸症を疑い抗菌薬の投与を行っていきます。この2つに反応が乏しければステロイド反応性腸症(炎症性腸疾患など)を疑っていきます。










 この2つの写真は血便と嘔吐が対症療法で改善しなかった症例(ワンちゃん)の内視鏡検査画像です。2ヶ所とも同じ十二指腸の画像(入り口と奥側)ですが、1枚目に比べて2枚目の方が全体的に赤く、所々に出血も見られます。しかし病理検査では2ヶ所ともに、腸粘膜に炎症細胞がたくさん浸潤してる「好酸球性胃腸炎」という診断でした。ちなみに胃粘膜や大腸粘膜も同様の病理検査結果でした。これまでの治療経過と病理検査結果を元に『炎症性腸疾患』と診断し、ステロイド治療を開始して、現在は順調に回復しています。


 下痢や嘔吐の消化器症状はいろいろな疾患の初期症状として表面化します。あまり経過を見過ぎると重症化する可能性もありますので、不安があれば診察を受けてください。


獣医師 高木



投稿者 香椎ペットクリニック

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