動物病院コラム

2019年9月11日 水曜日

肥満細胞腫について

今回の症例は肥満細胞腫についてです。
2才のフレンチブルドックのワンちゃんですが、耳に小さな腫瘤ができたとの主訴でした。

若齢の場合できる腫瘍として有名なのが 組織球腫と呼ばれる良性の腫瘍で、ある程度大きくなったとしても自然に退縮するのが特徴です。
腫瘤ができた場所によっては外科処置が必要なこともあるのですが、ほとんどは経過観察で 何の問題もありません。
2歳という年齢から考えても組織球腫かもというつもりで腫瘤の細胞診を行なったのですが、細胞診をしてみると肥満細胞が 確認できました。



肥満細胞腫は犬の皮膚腫瘍の16〜21%を占める腫瘍で 若齢では 3週齢でも報告がありますが、平均発症年齢としては9歳です。
好発犬種としてはボクサー、ボストンテリア、フレンチブルドッグなどの短頭犬やラブラドールなどの大型犬も含みます。
腫瘍のできる場所として多いのが皮膚ですが、皮下や粘膜、内臓にもできることがあります。

そしてこの腫瘍の特徴としてヒスタミンやヘパリンといった生理活性 物質を含むという点です。
ヒスタミンは腫瘤の部位に痒みを引き起こすため、ワンちゃんが掻きむしったりすることが多く、またヘパリンは 出血が止まらないといった症状に繋がります。
1番怖いのがヒスタミンショックで、肥満細胞が脱顆粒することによりヒスタミンが血中に流れてショック状態を起こし、最悪の場合死亡します。

この腫瘍は肺に転移することは少ないですが、付属リンパ節に転移している場合も多く、3cm以上の肥満細胞腫であれば転移リスク高いとの報告があります。
転移の可能性のある臓器としては脾臓と肝臓が特に注意が必要です。

また、ワンちゃんの予後に重要な因子なのがc-kitと呼ばれる遺伝子に変異があるかどうかです。
この遺伝子に 変異があると予後が悪いとされるため、変異あり無しで治療方針が変わります。
変異がある場合は分子標的薬を中心とした治療を行います。

このワンちゃん場合、c-kitの 変異がないとの検査結果が出ましたので、予後に期待したいところです。

この様に非常に小さな イボの様な塊でも腫瘍であることが多々あります。
ワンちゃんが若いからといって安心せず、イボの大きさに変化がある 、硬さに変化があるといった場合には一度検査される ことを お勧め致します。

獣医師の卵 関

投稿者 香椎ペットクリニック