動物病院コラム

2020年9月12日 土曜日

歯の破折について

人間であれ、動物であれ、歯は消耗品です。
乳歯であれば生え変わりますが、
永久歯は抜けてしまったらもう生えてきません。

犬でも猫でも、歯のトラブルは人間と同様です。
一番多いのは歯周病でしょう。
人間のような歯磨きが毎日できるわけではありません。
私が診てる患者さんで、人用の電動歯ブラシを用いて磨いていらっしゃる方もおられますが、
これができるのは非常に稀なケースだと思います。
人間でさえ、毎日磨いてても歯周病になる人はなります。

さて、今回はタイトルにもあるように、歯の破折についてです。
歯はどんな時に折れるか?

猫ちゃんであれば、外でよくケンカをするオス猫なんかは、
犬歯が折れている、欠けているのをしばしば見かけます。

では、ワンちゃんでは??
私が一番多いと感じるのは、硬いおもちゃ、硬いおやつ、例えばヒヅメです。
人間でも、噛むことはストレス解消につながると言われています。
ワンちゃんでも同様でしょう。
ただ、個体個体の歯の強さ、噛み癖によっては、歯も割れる場合もあるのです。

先端が少しかけた、少しずつ磨耗していく分にはほぼ問題にはなりませんが、
歯の根っこに向かって縦にわれてしまった場合は、、、
残念ながら歯を温存することは非常に困難な事が多いです。
ほとんどの場合が抜歯の適応になります。

若くて元気な子がガリガリ噛んで歯が割れて、
抜歯の適応になった場合、、、
根っこ自体は健康なので、抜歯にはかなりの時間を要します。
一番割れやすいのは、噛む時に一番使われる、一番大きくて根っこが3本もある歯、第4前臼歯なんです。
歯周病もなく、歯槽骨もしっかりしているので、
縫合して閉鎖するためには、抜歯後の骨の切削が必要です。



画像は、手術後の写真です。
若いこなので、他の歯はすごく綺麗です。

硬いおもちゃやおやつがダメとは言いませんが、
その子の性格や噛み癖によっては、今回のような事態になる可能性があります。
そのことを踏まえて、よく観察して、
状況により与える物を選択してあげましょう。

余談ですが、上述した電動歯ブラシですが、
その影響で私自身も購入しました(笑)
某国内メーカーのW音波のやつ。
めっちゃ良いです。手磨きには戻れません(笑)。

獣医師;河野




投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL

2020年9月 1日 火曜日

尿道結石

今回は泌尿器に大きなトラブルを生じてしまったワンちゃんをご紹介します。

6歳くらいのフレンチブルドッグでしたが、頻尿、血尿が主訴で来院されました。他院で抗生剤を処方され血尿は改善していたようですが排尿障害が重度で診察室でも排尿態勢を度々とっていましたが僅かにしか尿が出ていませんでした。

当院でレントゲン検査を実施したところ尿道に大量の結石が詰まっていることが判明しました。



上記のレントゲンは膀胱や後肢辺りを横から撮影したものですが



赤線で囲んでいる範囲内にゴロゴロとした結石が確認できます。

これが原因で重度の排尿障害になっておりましたので、まずはカテーテルを用いて生理食塩水を勢いよく入れることによって膀胱内に押し戻そうと試みました。

しかし残念ながらいくつかの結石が全く戻ってくれなかったので外科手術を選択しました。

術式としては陰嚢部造廔というもので陰茎先端まで続いている尿道を途中で切開して陰嚢部分に開口させるというものです。

なかなか言葉で説明するのも難しいので術後の画像をご覧ください。



このような形で排尿するための道を別の部分に造ってあげるものです。

これによりしっかりと尿を出すことが出来るようになりました。

残念ながら手術にはメリットもあればデメリットもあり、今回の手術では排尿がしっかりできるというメリットがありますが、尿路感染を起こしやすくなるというデメリットもあります。

手術を行う際はこのメリットとデメリットを比較し、手術を実施することで本人の体調や生活の質が改善するかどうかを見極めることが非常に重要になります。

今回のような手術は比較的レアなものではありますが、その他の手術に関してもメリットとデメリットを比較して動物のQOL(生活の質)が改善できるように努めていこうと思います。

獣医師;永松

投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL

2020年8月13日 木曜日

CT検査vol.29

今回は3月に紹介させていただいた、vol.25の肩甲骨を骨折した症例の経過を紹介いたします!

手術は行っていない症例の経過で、骨折した肩甲骨が数ヶ月経過してどのようになっているか気になるところでしたが、オーナー様の了承を得て再度CT検査にて確認することができました。

ちなみに、歩行もしっかりとできており機能障害もでておらず、また骨折しちゃうんじゃないかと思うほど動いていました笑

以下に2パターンの角度で、骨折直後の3月の画像と3ヶ月後の6月の画像を比較してみました。

【骨折直後①】


【3ヶ月後①】


【骨折直後②】


【3ヶ月後②】


骨折部位を整復はしていないので、形はほとんど変わらないようですが、さらにズレることもなく骨折した部分で隙間を埋めるように骨が作られていました。

肩甲骨の形こそ歪ですが、現状機能的には全く問題なさそうなので、手術を無理に実行しなくて良かった症例となりました。


獣医師 木場

投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL

2020年7月31日 金曜日

誤食 vol.3

前回、前々回と誤食のお話をしましたが、3回目として新たな誤食の症例を紹介いたします。
こんなにも紹介する症例があるくらい誤食の事故は多いものと思っていただいてもいいかもしれませんね。

今回は中年のチワワで、この子も食欲旺盛で、ご家族でお子さんが食事をしているときは、必ず側に居て、おこぼれを期待してスタンバイしているタイプでした。
その日、あるものを食べ終わって、ごみ箱に捨てようとしたときに誤って落としてしまい、刹那の瞬間、咥えて飲み込んでしまいました。
それから様子を見ていましたが、本人はケロッとしていたので、大丈夫かなと考えていたそうですが、数時間後に胃液を嘔吐しました。それで心配になり当院に受診されました。

稟告を聞き、まずはレントゲン検査を行いました。
そのレントゲン写真がこちらになります。



赤く囲んだ部分が、胃の中にある誤食した異物と思われるものです。



これが何だったかというと、



直径1.5cmの梅干しの種でした。

この症例は催吐処置により排出されなかったので、内視鏡により無事摘出されました。
以前から誤食癖があり、今回は2度目の誤食だったとのことです。

今回の症例も、前回お話しした症例と同じで、臨床症状が乏しい(嘔吐1回だけ)ものでした。それ以外に体調に問題がなかったので、飲み込んだところを見ていなければ、受診するまで日数があったかも知れません。

梅や桃などの植物の種、トウモロコシの芯など、人から見たら不要のものでも、動物たちからしたら、最高に興味を惹かれるものなのでしょう。

誤食に対する治療は、異物のある位置や、形状、材質、サイズ等の状況により、催吐処置、内視鏡、外科手術、経過観察などの選択肢から最適な方法を選んでいきます。
どの選択肢を選んでも、動物たちに負担をあたえてしまいます。私たちが十分注意をすれば、事故は未然に防げます。
このコラムを目にして、少しでも誤食事故率の低下に繋がればと願っています。

獣医師 高木

投稿者 香椎ペットクリニック | 記事URL

2020年7月13日 月曜日

育まれる命

まだ雨の日が続きますが、
朝からセミの鳴き声も聞こえてくるようになりました。

先日、夕食後に自宅マンション敷地内の植え込みの木をのぞくと、、、



まさに今、羽化が始まったばかりのセミを発見!!

10分後には、、、↓



マンションの室外機の風にあおられながら、ゆっくりと脱皮しています。

さらに30分後には、、、↓



何と美しい色shine

この間40分間、思いふけりながら色々なことを考えますflair

宇宙が誕生して138億年。

地球が誕生して46億年。

昆虫が陸上に現れたのが4億年前。

このセミの幼虫が生まれたのは5〜7年前。

成虫になったこのセミの寿命が2〜3週間。

連綿と続く生命。

消える命があれば、新たに誕生する命があります。

命には限りがあります。

限りがあるから尊いものになると思います。

そんなことを考えた、7月の夜でしたnight


さて、もうすぐ梅雨も明けそうですが、暑さに負けずに頑張りましょう!(笑)

獣医師;河野



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