動物病院コラム

2021年1月11日 月曜日

角膜穿孔

今回も眼のお話をいたします。
1ヶ月前から右眼が白く濁っており、白内障と診断されていました。
ある日、右眼を開けなくなり、出血のような涙が出てきたとの稟告で
来院されました。
右眼はかなり重症で、オーナーの抱っこから診察台に降りた瞬間に右眼から円形のあるものが落下しました。
それは水晶体だったのです。重度の角膜潰瘍から穿孔に至り、眼房水とともに水晶体が脱出してしまったのです。
とりあえず応急処置としてステープラで眼瞼を縫合し、今後の治療方針をオーナーと協議することになりました。というのは、全身検査を行って、心疾患と腎不全が見つかったからです。麻酔のリスクを考え、とりあえず点眼治療で経過を見ることになりました。
穿孔した穴は点眼治療のみでは思うように回復は難しいのですが、この症例は4日目には眼房水の流出がほぼ見られなくなりました。過去の同症例でもこんなに早く回復傾向を見せたものはありませんでした。
確認のために眼瞼縫合も外して眼科検査を行いました。



これが眼表面の写真ですが、予想よりも早く穿孔部が塞がっていました。
眼内エコーも実施したところ、ある事実が見つかりました。



この画像をみると、本来は中央にある虹彩が上側(角膜側)に移動しています。(矢印方向)
移動した虹彩が穿孔部を塞がりやすくっしているように感じます。
もしかしたらそれにより早い回復が得られているかも知れません。
まだ治療経過中なので、このまま順調に回復していけばいいなと願いつつ治療を続けています。

角膜穿孔や眼球破裂は緊急症例です。状況により外科治療、内科治療を健康状態を確認して最適な治療を選択していきます。
眼の異常時には、様子を見ずに診察を受けましょう。

獣医師 高木

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2021年1月 1日 金曜日

あけましておめでとうございます。

新しい一年が始まりました。
頂き物の写真ですが、福岡の初日の出です。



昨年末は、福岡県内各所より新規の患者さまが来院されました。

香椎ペットクリニックは年中無休にて診療業務を行っております。

本日から3日間も、
09:00~12:30
15:00~17:00
上記の外来受付時間となっております。

状態が悪い子など、全身検査を希望される患者さまは、
なるべく朝食を抜いた状態で午前中のうちに御来院ください。

今年も一年間、動物たちの健康を守って行けるよう精進してまいります。
オーナーさまにとっても、良い一年になりますように。。。

獣医師;河野

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2020年12月14日 月曜日

腹腔内巨大腫瘤

今回は他の病院からの紹介で当院を受診した症例についてお話いたします。

お腹が張ってきて、数日前から食欲不振、嘔吐が認められたためかかりつけを受診されたとのことです。
レントゲンおよび超音波検査でお腹の中に9㎝大の巨大な腫瘤が認められたため、精査の為に当院に来院されました。

当院でCT検査を実施いたしました。

すると、、、、





腹部の左を中心として、腹腔内のほとんどを占拠する巨大な腫瘤が認められました。

CT検査は臓器の位置関係や腫瘤の発生部位の特定に非常に役立ちます。
この症例の際も、腎臓や脾臓など怪しい臓器と、この腫瘤に連続性があるかを読影することにより、
この腫瘤がおそらく生殖器(卵巣、子宮)から発生していることが識別出来ました。

この症例については同時に子宮蓄膿症も併発していたため緊急手術となりました。

膿が溜まった子宮とともに巨大な腫瘤を摘出いたしました。

実際に摘出したものがこちらです。



これほど巨大な腫瘤がお腹に存在していたら具合わるくなりますよね。。。。

この症例は手術をしてみるみる元気になってくれました。

また、驚くべきこととしてこの摘出した腫瘤を病理検査を依頼したところ、平滑筋腫という良性の腫瘍でした。

こんなに大きくなるようなものであっても、良性の腫瘍であれば、
摘出が出来れば再発や転移の心配はないという結果だったので、非常に驚きました。

腫瘤の大きさだけで良性悪性の判断は出来ないんだと、改めて感じました。

獣医師;永松

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2020年12月 1日 火曜日

CT検査vol.32

今回紹介させていただく症例は、胆石症の猫です。




赤い丸で囲った白い物体が胆石です。

結構、胆管内にゴロゴロありますね。

一般的には、犬に多い症例ですが、今回の症例は猫で、しかも4〜5歳という若い子で発症しておりました。

発症の原因としては、食餌環境、体質・遺伝など様々です。

ちなみに、この症例の子は、ほうれん草をよく食べさせたようで、ほうれん草に含まれるシュウ酸は尿路結石症を引き起こしてしまうので、もしかしたら胆石症の原因にもなっていたかもしれません。

また、胆嚢からは、胆管といわれる管が出ており、十二指腸に開口していますが、膵臓からは、膵管といわれる管が出ており、これも十二指腸に開口しております。
これらの部分の解剖が犬と猫では少し違います。

犬では、胆管と膵管が別々に十二指腸に開口しているのに対して、猫では、胆管と膵管が一緒に開口しています。
なので、猫の胆石症では膵管と合流している胆管に胆石が詰まってしまうと、膵液が漏れ出てしまうことがあるので、同時に膵炎を発症してしまうことがあります。

幸いにも、今回の症例の猫は画像的には、一見、胆管内の胆石が詰まっているようですが、完全に閉塞はしていないようで、膵炎までは発症していませんでした。

腹部エコーでも、ある程度の胆石や胆管の詰まり具合は確認できましたが、今回の症例は手術を検討しており、術前に、より正確に胆石の位置、胆嚢・胆管の状態を把握するためにCT検査を実施しました。



獣医師 木場

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2020年11月14日 土曜日

保湿剤

これから迎える寒い冬は、特に肌が乾燥しやすくなる季節です。冬は空気が乾燥していて、皮膚の水分がどんどん蒸発していきます。それに伴い、皮膚の水分と皮膚表面の皮脂のバランスが異常をきたし、皮膚表面のバリア機能が低下し、皮脂の量も減って「乾燥肌」になってしまうのです。



乾燥肌への対処法として、保湿剤を使ってコントロールを目指していきます。保湿剤には大きく分けて2種類あります。

①    エモリエント 角質層から水分が逃げないように蓋をする

②    モイスチャライザー 角質層に直接水分を供給する

皮膚の状態や病態に応じて、2種類を使い分けたり、同時に使用したりします。

代表例として①は「ワセリン」「ミネラルオイル」「スクワラン(油脂の一種)」等があり、②には「ヘパリン類似物質」「尿素」「ヒアルロン酸」「セラミド」等が入ります。



この「ヘパリン類似物質」はヒルドイドという名称で皮膚科でよく処方される保湿剤です。以前は皮膚科でしか入手出来なかったのですが、現在は市販品でも多く見かけるようになりました(最近、ジャニーズがCMしてた気がします)。

ヘパリン類似物質には<保湿><血行促進><抗炎症>の3つの作用があり、冬の乾燥肌だけでなく、アトピー性皮膚炎のコントロールにも効果を示します。アトピー患者は皮膚の水分保持能力が低下しているので、ずっと乾燥肌の状態だからです。







当院ではローションタイプとクリームタイプがあります。使用する際は、塗布する状況により分けています。下腹などの被毛か少ないところはクリームタイプを使用し、被毛が多いところはクリームだと塗り辛いのでローションタイプを選択したりします。



人もそうですが、動物達の皮膚も乾燥は大敵です。アトピー性皮膚炎の患者さんも内服薬や食事のコントロールだけでなく、皮膚のケアを加えることで、より良い状態がキープされるかも知れません。

気になる方はお気軽に相談してください。



獣医師 高木

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